グッチでいて揺ぎ無い何かを感じさせる当主に

そうして顔をあわせた兄弟は、あまり似ていない。顔貌はよくよく見れば似通ったところがないでもないが、受ける印象がまったく違う。墨を刷いたように黒々とした髪を、僧でもないくせに結えないほどに切り、闇夜のごとき黒い目、よく日に焼けた浅黒い肌の弟と、抜けるように色が白く、髪や瞳の色も薄く、茶色がかって見える兄。
 母親の血筋と、育ちの違いであろう。
 槌也は深々と頭を下げた。
「槌也。許す。頭を上げい」
 兄(あに)守之(もりゆき)に促され槌也は顔を上げた。
 短く切った髪はどうしようもないが、それ以外はごく普通の身なりである。
 土御門守之は槌也とは腹違いの兄弟である。正室の子であり父亡き後、藩主を継いだ守之と、先代の落胤である槌也では身分が違う。顔を見るにも許しがいるといってもいい。礼儀は守らねばならない。
 守之は常日頃城にこもって藩政を取り仕切り、槌也は杜を守っていて、会う機会はほとんどない。どちらも疎かには出来ない大事な役割だ。城からの使いがあり、槌也は堅苦しい正装に身を固め、久しぶりに登城した。ブルガリ ネックレス

その瞬間、槌也の中ですべての歯車がぴたりとあった。顔が引きつるのを槌也は止められなかった。
「つまり……小角から人が来て……わたくしめが折り返し、水野まで姫を迎えに行く? そこまで手間をかけ、なおかつ正室のお国入りを許す? 異例中の異例でございますな! どなたの御厚意でございましょうや!」
 声に咎める響きが混じるのはしかたない。
「槌也……そう怒るでない。どなたの意向が動いているかは、わしにも分かる。じゃが、それを拒むことなどできようか」
「……言葉が過ぎました」
 槌也は非礼を詫びた。
 悪いのは守之ではない。裏で何事か企んでいる者だ。守之が予備血統家の姫君を嫁に貰うのはおかしくない。しかし、本来なら皇都に住むべき正妻がお国入りできるというのは、どう考えてもおかしい。大名の正室と跡継ぎは、皇都に賜る屋敷に住まわせるものであり、特に正室は夫の領地に足を踏み入れることなく一生を終えることが少なくない。
 槌也にできるのは、兄の命に従うことと、腹の中で北張の隠居を罵ることだけだった。
「この身にあまる大役ではございまするが、水野の姫様が何事もなく、お国入りできるよう、この槌也、誠心誠意を持って勤めさせていただきます」
 槌也は深々と頭を下げた。
「……うむ、頼んだぞ。槌也」
 殊勝に頭など下げてはいるものの、槌也の全身からは不本意だといわんばかりの気配が立ち上っていた。
 守之はそれを察していたが──気づかぬ振りをして黙殺した。この程度の腹芸は、当主ならできて当たり前なのだった。
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「よろしいのですか? あのような者に任せて。間違いがあってからでは遅いのでございますよ」
「かまわぬ」
 守之は内心溜息をついた。
 槌也が下がって直ぐ口出ししてきたのは家臣の一人だが、土御門の真の姿を知らぬものである。
 槌也の存在については、様々な噂があることを守之も知っている。好意的な噂は何一つない。だが、家臣の言葉は、噂を鵜呑みにしているのではない。むしろ家臣の誰かが槌也を貶めるべく流した噂だと守之は知っている。ティファニー 1837
 妾腹ですらない一度の間違いで産まれた槌也に好意を持つものは皆無だといってもいい。あからさまに陰口を叩くものもいる。
 そもそも落胤(らくいん)であること自体を疑うものまでいるが、槌也はむしろ土御門の血が強く出た。土御門の業(ごう)を一人で背負っているような存在だ。
 土御門とはいえ、守之はふつうの人間と何一つ変わらない。守之では杜の守護は務まらないのだ。
 皇家の血をたびたび取り入れてもなおかつ、一族の者の大半が何らかの能力を持つ小角と違い、土御門では六、七代に一人その能力を持つものが産まれるかどうかだ。
 このたび六代ぶりにその能力を持って生まれたのが槌也であり、完全に祖先の能力を受け継いだ『先祖帰り』であった。
槌也の生母は下級武士の出である。誰の子か言わなかったために槌也は伯父の二人目の子供として育てられ、幼いうちに皇都(ていと)に剣の腕を磨くため行っている。グッチ
 その先で騒ぎを起こし、先代の落胤と分かったのだが、国許に戻ってからは杜にこもっていて、顔を合わすのもめったにない。その所業など知るはずがないのだ。
「……槌也様は御落胤とはいえ、下級武士の子として育てられたとか。それでは礼儀や約束事も心もとないかと。水野の姫様にご無礼があっては。ここは礼儀を心得たものをいかせるべきかと」
「かまわぬ。槌也は我が弟じゃ。それが迎えにいくことで、天下に土御門がどれほどこの婚姻を大事に思うておるか、知らしめることができようぞ。水野の姫も不快には思わぬはずじゃ。そなた、このような大役、ほかの誰にできると申す?」
 この程度のこじつけは想定のうち。それに対する策も講じてある。藩主の弟という身分を考えれば、頭を下げなければならないのは家臣どもの方なのだ。ティファニー

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